Skip to content

中国語 / 汉语 (普通话)

性, 数, 格

主語の性や数, 格に依存して動詞が活用する, あるいは動詞に形態素が付着するということはありません. 性の概念は存在しません. 名詞の数については日本語と同様に量詞を用いて表します.

  • 中国語 : 我 喝 一杯 咖啡。
  • 逐語訳 : 私は 飲む 一杯の コーヒーを

格は語順あるいは介詞 (前置詞) で標識します (英語みたいな感じです).

時制

中国語では時制に応じて動詞が活用する, あるいは動詞に形態素が付着するということはありません. 文が表している事態が起こる時間を具体的に明示します.

  • 中国語 : 我 明天 去 东京。
  • 逐語訳 : 私は 明日 行く 東京に

アスペクト

中国語では, アスペクト助詞の过, 了, 着と, 副詞の在を用いてアスペクトを表します.

アスペクト例文
経験中国語 : 我 去 中国。
逐語訳 : 私は 行ったことがある 中国に
完了中国語 : 我 穿 这件 衣服 了。
逐語訳 : 私は 着た この 服を
継続中国語 : 我 穿 这件 衣服
逐語訳 : 私は 着ている この 服を
進行中国語 : 我 穿 这件 衣服。
逐語訳 : 私は ~しているところだ 着る この 服を

補語

中国語には動詞の後に付着して多様な意味を表す補語というものが存在します (英文法の補語とは別の概念). 補語は, 文法が比較的簡素な中国語に多様な表現を与える役割を担っています. 中国語を大きく特徴づける概念なので, 以下で詳しく見ていきます.

時量補語

動詞の後に置いて, 動作の持続量を表します.

  • 中国語 : 我 学了 三年 汉语。
  • 逐語訳 : 私は 勉強した 三年間 中国語を

動量補語

動詞の後に置いて, 動作の回数を表します.

  • 中国語 : 我 看过 三遍 那篇 小说。
  • 逐語訳 : 私は 読んだことがある 三回 あの 小説を

結果補語

動詞の後に置いて, 動作・行為の結果を表します.

  • 中国語 : 这件 衣服 洗 干净 了。
  • 逐語訳 : この 服は 洗う きれい なった
  • 日本語 : この服は洗ってきれいになった

方向補語

動詞の後に置いて, 人や物の動作の方向を表します.

  • 中国語 : 我们 走 上去 吧。
  • 逐語訳 : 私たちは 歩く 上がる ~しましょう
  • 日本語 : 私たちは歩いて上がりましょう

程度補語

動詞の後に置いて, 程度がいかほどかを表します.

  • 中国語 : 我 饿 死了
  • 逐語訳 : 私は お腹がすく 死にそうなぐらい

可能補語

動詞の後において, その行為が可能かどうかを表します.

  • 中国語 : 我 吃不完 这个菜。
  • 逐語訳 : 私は 食べきれない この料理を

様態補語

動作の結果についての評価や対象の状態を表します. なお様態補語は「S+V+(O)+V 得+C」という語順を取ります.

  • 中国語 : 你 说 英语 说得 很 流利
  • 逐語訳 : あなたは 話す 英語を 話す 流暢に

音韻論

中国語には声調があり, 声の抑揚によって意味が変わります. 特に中国語やタイ語などの,一音節内で声の高低が変わる言語は, 曲線声調と呼ばれています. 声が平坦な第一声の「妈(mā:母) 」, 声が徐々に上がる第二声の「麻 (má):アサ」, 下がって上がる第三声の「马(mǎ):ウマ」, 徐々に下がる第四声の「骂 (mà):罵る」は, 日本語でふりがなをつけると同じ「マ」が付きますが, 異なる意味を持ちます.

文字

皆さんが中高で漢文を読んだことからもわかる通り, 中国語は漢字のみで表されます. しかし, 中国本土で使われる漢字は, 1950 年に中華人民共和国政府によって制定された簡体字です. これは, 以下の表を見れば明らかなように, 伝統的に使われていた複雑な漢字を簡素化したものです. 1981 年に日本国政府によって制定された常用漢字同様, 元の漢字に含んでいた意味が削られているという批判があるものの (詳しくは白川静『字通』を参照されたし) , 一定の合理性はあります. ここでは, 中国の簡体字, 台湾の繁体字, 日本の常用漢字を比較してみましょう.

簡体字のみ異なる例

簡体字繁体字常用漢字

繁体字のみ異なる例

簡体字繁体字常用漢字

常用漢字のみ異なる例

簡体字繁体字常用漢字

全て異なる例

簡体字繁体字常用漢字

なぜ声調があるの?

中国語を学ぶ人は異口同音に「中国語は発音が難しい」と唱えますが, その難しさは中国語が声調を持つことに起因しています. 中国語を学ぶ上で最も大きな障害となる声調. では,そもそもなぜ中国語には四声が存在するのでしょうか. フランスの言語学者アンドレ=ジョルジュ・オドリクールは, ベトナム語の声調に関する研究の成果を中国語の声調にも敷衍しました. すなわち, 中国語では漢字の読み方の末尾の子音が欠落した後, その子音の前の母音に影響を与え, その母音に抑揚がついたと想定しました. これを「声調発生 (tonegenesis)」と言います. 彼は, タイ語やミャオ語等の, 声調が存在する言語の大半が同様の理由で声調も持つに至ったと主張しました.

漢字文化圏の民としての学習のすゝめ

中国語には日本語と共通する語彙・漢字があります. 例えば,“学习”という語彙に注目してみましょう. “习”は日本語でいうと「習」に相当する語です. 中国語には“习惯”という単語があり, これは漢字も意味も日本語と同じです. このように意味と漢字が同じもしくは似ているものを想起することで, 中国語の勉強はグッと楽になります.

参考文献

  • 丸尾誠 李軼倫,『これならわかる 中国語文法 入門から上級まで』, NHK 出版, 2022
  • 北京大学中国語言文学系語言学教研室編,“汉語方言詞汇”, 文字改革出版社, 1964
  • 文字改革出版社編,“閩語・湘語・贛語・客語方言与普通話”, 文字改革出版社, 1958
  • 维基词典:漢語發音表記, 最終閲覧日 2022/5/31
  • 維基詞典 (中国語版 wiktionary),「言」, 最終閲覧日 2022/5/31
  • Haudricourt, André-Georges (1954). “De l’origine des tons en vietnamien”. Journal Asiatique (242): 69–82